ジャニオタが勉強してみた

生粋のジャニヲタが、人生のお勉強をするブログ

舞台「文豪とアルケミスト 捻クレ者ノ独唱(アリア)」の感想

【感想】
 徳田秋声の成長を見守ることで、見る側が自分の生き方を見つめ直す作品だと思った。

まだストリーミングで1回しか見てないので、ディレイで複数回見て深堀りしたら、適宜修正していきます。


現時点での【様々な伏線や気づき】

・幕開け演出の変化
 吉谷さんのいつもの演出だった。最初に要所要所のシーンを見せて、観客に全体像をぼんやりと感じさせると共に、『そのセリフってどういう意味?』って疑問を投げかける手法の事。
 でも今までなら複数人でその演出をやってたけど、今回は徳田秋声、1人でその役を担ってたの。だから赤澤氏の演技力が試されるなと思った。
 切り取ったシーンを1人で演じないといけないから、切り替えが大変そうだった。今後、回を増すごとに、その切り替わりがより明確になっていくのかなぁと思うので、千秋楽まで走り切ってください!期待しています。


・垂れ幕の没年
垂れ幕に没年が書かれていたのは、文劇3を見た人なら『あっ!』と思う仕掛けになっていた。
1903年尾崎紅葉
1908年国木田独歩
1939年泉鏡花
1943年徳田秋声
1948年太宰治
1964年佐藤春夫
1972年川端康成


ストーリーテラー
 前シリーズのストーリーテラー役は江戸川乱歩だったのが、今回は国木田独歩(+佐藤春夫)ってことでいいのかな?独歩は記者の印象が強いから、文豪とは一歩離れた視点で話していて、文劇2では見せ場が無かった分、今回は記者としての一面が引き立ついいポジションだと思った。あと、佐藤春夫。彼も文劇1で見せ場が少なかった分、今回は個性的なキャラクター達を俯瞰する、ストーリーのぶれない軸になってくれていた気がする。


・幕に投影される演出と本のセット
 侵蝕された時に文字が天に上っていくあの見せ方!
 めちゃくちゃ好きなんだけどー。
 前シリーズはセットに照明を当てることで世界観を出してたけど、今回は布に当てるのがメインでした。布の上に文字が駆け抜けていく様子が、侵蝕のスピード感を表していてとてもよかったです。
 そしてセット!本を見開いたセットの上に役者さんが立つことで、本から文豪が飛び出てきたような立体的な感覚がしました。もうっ、吉谷晃太朗氏の演出、大好き!!!!


・魔界と魔鳥
 川端康成佐藤春夫に「魔界で荒ぶるあなたの戦いを見てみたい。あなたは魔界がよく似合う」みたいなことを言った意味がわからなくて調べてみた。佐藤春夫は「魔鳥」と言う作品を書いていました。あらすじは『風評により魔鳥使いとされた家族が部族に惨殺される』という内容で、関東大震災後の朝鮮人虐殺も影響しているらしい。(読んでないので詳しいことは不明、すまん)植民地について色々思うところがあったっぽいから、川端康成は侵蝕された世界で、佐藤春夫がどう振る舞うかを見てみたかったのかな、と思った。植民地=侵蝕になってる?ここら辺、考察曖昧なので詳しい人、教えてほしい。


・熱海繋がり
 太宰治井伏鱒二檀一雄との「熱海事件」が元ネタで、太宰治の「走れメロス」が出来たってのは、以前に太宰を調べたから知ってたの。「金色夜叉」の”熱海”繋がりでその話を持ってくるか、っていう話の展開が素晴らしい!
 このシーン、佐藤春夫が出てるんだから、普通なら太宰と檀の借金を払ってあげた佐藤が話す立場になると思うじゃない?でも敢えて国木田独歩が話すことで、彼のジャーナリストとしての立ち位置を、作品の早い段階で観客に示してた。


尾崎紅葉への盲目的尊敬
 尾崎紅葉の「金色夜叉」を最初に侵蝕させることで、泉鏡花尾崎紅葉に対して盲目的尊敬をしていることを観客にまず提示し、そこからの泉鏡花の「婦系図」が侵蝕されたので、泉鏡花尾崎紅葉が侵蝕者であることに全然気づかないことがすごくわかりやすかった。


・尊敬→尊敬→尊敬の図
 里見弴が泉鏡花を慕う姿がしきりに描かれていた。尾崎紅葉を慕う泉鏡花が、逆に慕われる身になった時に感じるしんどい気持ち。その気持ちを知っているからこそ、疑心暗鬼になって『自分が尾崎紅葉を殺したんじゃないか』という疑念になったんだな、と思った。ここら辺の里見弴の使い方がうまいよね。


尾崎紅葉の死因と泉鏡花潔癖症
 泉鏡花がもなかに火を通して真っ黒焦げにして、尾崎紅葉が「病気になっちゃう」って言うところ。笑いになってたけど、尾崎紅葉の死因は胃癌なんだね。焦げたものを食べると胃癌になりやすい点と、泉鏡花潔癖症の点を見事に表現して、かつ笑いに変えてて凄いと思った。


・貫一とお宮?
 「婦系図」が侵蝕された時に、泉鏡花徳田秋声が言い合いになるシーン。徳田秋声は声の主が泉鏡花の心の声ってわかってるけど、本人を目の前にし、周りの人の存在を気にして、言葉の真意を伝えることができない。でもそれが故に、自分が犯人に仕立て上げられてしまう。ここら辺の相手を想うが故にすれ違う感じが、文劇2の志賀直哉武者小路実篤を彷彿させた。めっちゃもどかしいんだよぉ。それが、好き(笑)
 しかし、2人を「金色夜叉」の貫一とお宮と表現するのはちょっと違和感があった。富山唯継が尾崎紅葉ってことなのかな?ここら辺の考察も掘り下げたい。


・文劇3のトラウマと川端との確執の回収
 川端康成太宰治の「女生徒」を褒めるくだり。文劇3で館長から「女生徒も斜陽も他人から盗用した作品。おまえは人から盗んだ内容しか書けない」みたいなことを言われていたので、そのトラウマをうまく回収し、なおかつ川端との確執もうまく昇華させたな、と思った。その結果、新太宰治が登場したわけだし(笑)


・シリーズ1からシリーズ2へ
 牢獄に入れられた徳田秋声太宰治の会話。文劇4は新しいシリーズの第1作目なんだ、と改めて思わせるやりとりでした。太宰治が1〜3で得た経験が、先輩として徳田秋声に引き継がれる。『潜書して戦う事とは』『自分とどう向き合うか』など。観察眼を持っていて、真実を見抜く目を持っている徳田秋声だからこそできる事を教え、彼に今、足りないものを太宰は示してくれていた。今までたくさんの人が太宰治に生きる道を示してくれてたからこそ、徳田秋声にアドバイス出来るようになったんだよね。『成長したな、太宰』と思わずにいられなかった。中でも特に文劇3の北原白秋の存在は大きいよ。


・どのタイミングで擬態に気づくか
 最後の戦いで尾崎紅葉が登場した段階で『あ、これ、萩原朔太郎に擬態したパターンと一緒のやつでは?』って気づいちゃった。そして案の定、尾崎紅葉は侵蝕者でした(笑)

 取り急ぎ感想を書きました。また気づきが合ったら足していくと思います。

 この感想を読んで第1弾から第3弾を見てない人はぜひ見てほしい。
 全部がちゃんと繋がってるから。

さ、明日からディレイ配信始まったらめっちゃ見るぞー!!