ジャニオタが勉強してみた

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「ミュージカル封神演義~開戦の前奏曲~」の感想(1/3追加修正)


【感想】
趙公明平野良さんで本当に良かった」(詳細は後で)
良かった点:ミュージカル×封神演義の魅力を知れた
悪かった点:原作未読だと理解しにくい。太公望の人物描写が浅い。


【あらすじ】(公式)
 古代中国ー殷の王朝時代。第30代皇帝・紂王は仙女の妲己を皇后に迎えて以来、国は乱れに乱れていた。それを見かねた崑崙山の教主・元始天尊は、悪の仙道を神界に封じ込め、革命による新たな王朝を作る計画「封神計画」を弟子である道士・太公望に命ずる。元々怠け者であった太公望だが旅をするなかで苦しむ民の姿に直面する。天才道士の楊戩や哪吒、天化ら力強い仲間と共に少しずつ仙道のいない平和な世を実現させようと「封神計画」を実行していくのだった…。
 太公望の活躍により、やがて世界は大きく動き始めた。殷を恐れ、争いを避けていた国々が殷へ反旗を翻しはじめたのだ。また西岐も国名を「周」とし、独立することを決める。太公望は周の軍師となり、打倒・妲己(殷)を掲げるのであった。しかし、妲己側は新たな策で太公望を追い詰めようとする…。
 新たに太公望に差し向けられたのは妲己や「殷」の太師である聞仲と揃って金鰲三強とうたわれた趙公明だったーーーー。


【前提】
 高校時代にリアルタイムで読んでた世代。ガチの原作ファン。封神演義は、生きる指針、人生の教科書、考え方の軸。
 封神演義が舞台になると知り初めて2.5次元舞台を見に行ったし、大阪人なのに前作はほぼ全通した。続編が観たくて2年近く『続編希望』って言い続けてようやく念願が叶った。
 なのに…初日が千秋楽になるなんて。

 (参考)人生初ファンミに行った時のレポ



 そんな拗らせオタクによる感想。

【様々な伏線や気づき】
封神演義がミュージカルの意義
 普通の舞台じゃなく、なぜミュージカルなのか。たぶんミュージカルじゃないと作品が進んでいかないんじゃないかな。歌詞の中でストーリーの解説もしてるおかげで、あの量の原作を3時間でまとめられたんだと思う。
 そして今回は趙公明が登場するからミュージカルじゃないと彼の魅力が引き出せない。なんなら趙公明様のためのミュージカルだった(笑)

・立ち位置やセット
 太公望達が舞台に立ってる時、同時に妲己&聞仲&趙公明や申公豹が登場するときは、大概セットの上段にいる。視覚的に太公望達と彼らとの力の差を見せてた。
 舞台中央に2枚の布が暖簾のようにかけられてた。そこに水墨画があって、なんとなく2次元の見開き漫画からキャラクターが登場してきた印象を受けた。しかも照明の影響でその布はモニターの役割もしてたし、すぐに宝具を変えたり、腕を差し替えたり出来るようになってた。吉谷さんの演出と言えば、アンサンブルさんだけでなく小道具の使い方がお上手だと思ってて、文劇の糸並みに、封ミゅではあの2枚の布がめちゃくちゃ舞台の中心的小道具?セットだった。

・キャラまで演じるアンサンブルさん
 魔家四将、楊任、馬元、呂岳。キャストには名前はないけど、ちゃんと衣装もウィッグもつけて、セリフや演技もキャラそのものでした。当日?公式ツイッターで魔家四将が出るって見て『えっ、そんなんキャスト欄にないのにほんとに出るの?前回の賈氏や黄氏みたいな感じかな』と思ってたら、想像以上のクオリティで感動した。
 楊任は殷洪役の田口司さん、呂岳は殷郊役の長江崚行さん、余化はスープー役の吉原秀幸さんなんだね。配信めっちゃ見てたけど全然気づかなかった。凄いな、役者さんって。そりゃこの3役は重要な役どころだから、ちゃんとした役者さんが必要だもんね。しかも太公望を助けるために亡くなった殷洪役の田口さんが、再び楊任として太公望を助けるのキャスティング神がかってる。誰がキャスティング考えたの??(1/3追記)

・メタ的要素
 フジリュー封神演義といえばメタ発言が多いのが特徴。
 趙公明の登場シーンがマジで趙公明様で、それに振り回される聞仲が「照明も音響も付き合わんでよい!」って怒ってる発言が、めっちゃフジリュー版の封神演義だな、と思った。メタじゃないかもしれないけど、第1弾同様、相変わらずいきなり歌い出す天化。そして2幕の最初でまた歌いだす太乙でした。

・キャスト変更
 個人的に陣内将さん演じる天化が好きだったから残念だったけど、太田さんの天化も想像通りの天化でした。あと、輝山立さん、ね…悔しいだろうなぁ。阿部大地さんは急遽決まった哪吒をあそこまで頑張ってくれてありがとうございます。特に今回は馬元くんとのシーンがあるから、哪吒の心の変化も表現しなきゃいけなくて大変だったと思う。1回だけの公演になっちゃったけど、キャストがキャラに馴染んでいく過程を観たかったな。

・四不象&黒点虎と哮天犬の描写の違い
 四不象&黒点虎は太公望&申公豹とやり取りするけど、哮天犬ってあくまで宝具なんだよね。そして腕から自由に出せる設定。だから布で表現するのは理に適ってる。

・観客の想像力ありきの舞台
 封神演義って漫画ならではの武器がどんどん出てくるから、演出家の吉谷さんも頭を抱えてるっておっしゃってた。舞台上で出来る事って限られてて、それを補完するのが観客の想像力だと思ってる。そのためには、原作を読んでないと補完できないから、封神演義の舞台は原作読んでないとわからないとこ出てくるだろうな、ってめっちゃ思った。特に番天印や馬元くんや進化形四不象、趙公明の原型辺りは、絶対原作読んでないとイメージできないと思う。
 あと方陣(殷)VS錐行の陣(周)は原作だとめちゃくちゃ完璧にキマるんだよぉ。私、高校生のときジャンプでこの戦いを読んで『もっと勉強して、知力で人生に勝ちたい!』って思ったぐらい衝撃だった。

・カットされた原作太公望のセリフ
 まず「約束できぬならわしは2人を犠牲にしてでもおぬしらを殺す!」(魔家四将に民を人質に取られたとき)
 第1弾で描かれてる初期は『敵も味方も出来るだけ殺したくない』っていう潔癖なまでの理想論を掲げてて、でも聞仲っていう圧倒的な力でねじ伏せられて、信念が変わっていくの。第2弾の辺りはちょうど過渡期前半だから、それを表現するためにもこのセリフは削らないで欲しかった。ちなみに過渡期後半は仙界大戦辺りだと思ってる。ほんとあそこら辺の太公望、見てられないほど葛藤があって辛い。
 次に「人間の力も借りねばならぬ事はわかっておったが、出来る限り犠牲は最小限に抑えたい。仙人界のおごりなのやもしれぬが…それでもわしはいやなのだ!!」(周の民が戦わないといけないとき)
 この太公望の『わかってる、けどイヤ!』って心情のセリフが削られてるから、1幕の大事な見せ場である殷郊戦がいまいち響いてこないんだよ。そしてこの二つのセリフって繋がってて、民のためなら仲間も犠牲にする→民を守るためなら自分が助けた子も自らの手で殺すって、だんだんと強くなっていく過程が表現されてるの。
 一応1幕の最後で「紂王も聞仲も妲己も倒す。そのためにはなんだってしよう。たとえ腕を失っても、血で汚れてでも!!」って原作のセリフは入ってたから、太公望の覚悟や強くなったのはわかった。けど、この二つのセリフがカットされてたから太公望の描写が浅くなってしまった気がする。

・殷郊戦で描かれていたもの
 脚本家さんはこのシーンで殷郊と殷洪兄弟の葛藤や苦しみを描きたかったんだと思う。でも、私は主人公である太公望の心理描写を観たかった。
 だって太公望は優しいから、将来敵になるのがわかっていながらも「目の前で殺されそうになっている兄弟を見殺しにはできない」って言って助けるんだよ。そしてその子が成長して自分の敵になるばかりか、その時の自分の甘さがきっかけで、多くの民が戦に巻き込まれて死んでしまう。自分の一時の優しさ・甘さが大量の民の犠牲を生んでしまった。その時の太公望の心情を考えると、私は耐えられない。
 しかも太公望は、仙人が人間に宝貝を使うのは絶対許せない信念を持ってて(一族が皆殺しにされた原因だから)、その許されざる行為を、自分が助けた子がおこなってしまうの。
 ここを掘り下げて描いてくれないと、太公望が利き腕を落としてまで1人で全責任を取る覚悟が際立たないし、自分の手を血で汚しても、民のために仲間を殺す辛さが伝わってこない。
 橋本さんも『あのシーンもっと出来たな』ってツイートしてたし、正直、私もそう思う。第1弾の最後で、血を吐いて死ぬまで聞仲と戦う橋本さんの演技を見たから、ここのシーンはもっと観客の胸に刺さる脚本×演出×演技になったんじゃないかって思ってた。
 初日が千秋楽になったから撮れてないかもしれないけど殷郊が「そんな顔しないでください。戦意が鈍る」って太公望に言ったときの太公望の表情が観たかった。
 辛辣な事を書いてしまってすみません。好きなシーンも。原作ではなかった、犠牲になった民に手を合わせる演出。太公望なら絶対そういう気持ちだろうなと思うから、この演出を足したのはすごく好き。
 
・主要キャラがいなくても成立している脚本
 今回って、雷震子、鄧蝉玉、土行孫が出ないから、魔家四将戦と劉環戦はどうするんだろうって思ってた。雷震子の代わりに哪吒を使ってた。劉環戦をザックリカットしても違和感なかったのは、間に聞仲の回想シーンを入れたからだと思ってる。馬元戦で親子話→殷の親の話で聞仲回想シーン→余化戦で飛虎の回想シーン→天化と飛虎の親子話、っていう一連の構成が素晴らしかった。
 
太公望が死から抜けるシーン
 ここの描写がまさしく『わぁ、吉谷さんだぁー!』ってなった。原作では太公望が1人で考えてるんだけど、舞台では過去の他キャラとの大事なセリフや回想シーンが入れられてるの。回想シーンでは声にエコーがかかっていて、前作の復習もできたし太公望の回想シーンっていうのがわかりやすかった(1/3追記

 しかも、宇宙に行った太公望が、地球を見て言うセリフは原作にはないセリフで、これは絶対作り手が今の時代に伝えたいメッセージを入れてきたって思った。そして、太公望が歌に乗せて「宇宙から見たあの星の美しさは変わらぬ。星は変わらず美しい」と言うセリフ。個人的にめちゃくちゃ感動した。だって、メッセージ性も持たせつつ、原作の流れも損なわず、かつ”宇宙””星””エイリアン”って、この先、めちゃくちゃ重要になってくるキーワードを違和感なく入れてくる絶妙なバランス。ここは観てて『ヤられたな』と思った。今回の舞台で一番刺さったし唸ったシーンだった。

 

【好きな演出】
・魔家四将が大地を腐らせる描写
・糸と紙を使った十絶陣
・アンサンブルさんだけで作るクイーン・ジョーカーⅡ世号
・「影」で表現する馬元と、「光」で表現する四不象
・馬元の心(人)と体(装置)の使い分け
・原作は立体映像なのにプロジェクションマッピングを絶対に使わない吉谷さんのこだわり(笑)


【もしかして】
・安里さん、セリフ間違えた?
 楊任戦で原作では「頭の中を読み取った」「脳の一部を乗っ取った」なんだけど、舞台では「頭の中を乗っ取った」って言ってて、言い間違えたのかなぁと思った。原作の手がジジジって変化しながら妖怪っぽさを感じさせて楊任に「それでもまだやるかい?」って言うシーンが今後の伏線で好きなんだけど、言い方がすごく柔らかかったのは、セリフ間違えたからだったら納得。

 あと前回「楊戩の髪の毛をポニテにするの大変」って言ってたし、リボンで結わえるようにしたのかな。
 

 

平野良氏の趙公明
 見終わった後に即ツイートしたけど、平野良氏ってなんなの?化け物なの?凄すぎて表現する言葉が出ない。それぐらいすごい役者さんだと思った。他作品でも拝見してて、見終わった後、絶対『この役は平野さんしか出来ないわ』って思わせるあの演技力なんなの?
 平野さんが気になったきっかけって、前回のミュージカル封神演義なの。たまたま入らなかった回に、平野さんと谷さんが来てたのね。で、2.5次元ナビという番組で封神演義が特集されるって見て、橋本さんもよく知らない、平野さんもよく知らない中、初めてその番組を見た時に『え、平野さんってすごくない?』って思った。立ち回りの上手さ、相手が求めてるものを笑いを含めてサラッと提供するスマートさ。しかもそれを相手に気づかせない頭の良さ。一気にファンになった。
 主役の橋本さんに「俺、封神演義めちゃくちゃ好きなの!谷佳樹って後輩と一緒に見に行って、延々と隣で封神演義の良さを語ってたから。今からでもいいから、どんなちょい役でもいいから出してくれない?」って言ってたの。だから趙公明役が平野良さんって聞いた瞬間『キター!!!』ってめちゃくちゃうれしかった。だって原作好きとしては原作好きな人に演じてもらいたいもん。そしてこんなこと言ってくれて、なおかつ演技めちゃくちゃ上手い人がキャスティングされて喜ばないわけない。もしかしたら初演の時点で趙公明役を平野さんがやるの決まってたから見に来たのかもしれないけど、その後、吉谷さん演出の文劇があったから文劇絡みで二人で見に来たのかなって思ってた。真相はわからないけど。
 今回の2.5次元ナビで、めちゃくちゃ嬉しそうに「封神演義に出演します!20年以上ずっと好きで、作品が好きすぎて、いくら稽古しても『趙公明じゃない』って初めて感じる葛藤がある」みたいなことをおっしゃってた。だから1公演しかできなかった平野さんの事を想うとめちゃくちゃ悔しい!!平野さんの趙公明をもっと見たいし、平野さんにもっと趙公明を演じて貰いたいから、原作ガチ勢としてぜひとも再演をお願いします。
 平野良さんと橋本祥平さんの対談記事を読んでたんだけど、平野さんが本当に封神演義ファンなのが伝わってきて『なに、もう、この人、ああぁぁぁ!!!!』ってなった。ちなみに記事を読んだ友達からは「みくらちゃんが封神演義について普段言ってるのとおんなじことを平野君が言ってる(笑)」って言われた。
 そんなわけで、封神ガチ勢の私なんかより平野さんの方がもっともっと悔しいと思うので、平野さんのために再演してください。お願いします。なんなら、国立アンニュイ学園でもいいです、ウソです。


【最後に】
初日が千秋楽になるなんて…
これも歴史の道標の仕業なんですか?
ご納得いただけなかったんですか?

それなら、あの方がご納得いただける形で、ぜひとも第2弾を再演して欲しい。
もちろん、第3弾でも構いません。シスター達の伏線も張られてたし。
でも第3弾で仙界大戦やるなら普賢君のあのシーン、私は直視できる自信がないなぁ…

とか言いつつ、フジリュー版の封神演義はここからが真骨頂なんです。
1巻の表紙の意味が解き明かされたり、細かな伏線が全部回収されていくんだよね。

最終話、最後の見開きページ。

あの太公望の表情が、苦しくなるほど好きだから、最後まで舞台化して欲しい。


【おまけ】
 趙公明が「戦術と戦略の違いは各自ディクショナリーを~」のくだり、高校生の時にディクショナリーを引きました。でもその時はぼんやりとしか違いがわからなくて、社会人になってようやく「趙公明が言ってたのはそういうことか!」って理解したよ。封神演義大好きだ―!!